the blue moon

□第2話 まほうつかいの弟子
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朝。7時15分。
川瀬事務所、平日。

「おはようございます」

私たち3人はテーブルを挟み顔を見合わせ、これっぽっちも心の込もっていない挨拶を交した。『挨拶は心を豊かに!』とかいう川瀬家の教訓に従ってのことだ。

「いただきます」

これもまた感情が入っていない。何でも、川瀬の父親がマナーには厳しい人だったらしく、いつの間にかいくつかの川瀬家教訓が生まれたらしい。ちなみに、初めて会った人に名刺を渡す、というのもその一つだという。

私はメロンパンをもそもそ頬張りながら、ちらりと前に座っている麻績を見た。頬杖をついてそっぽを向き、ぼんやりとしている。私がここに居候するようになってからも、麻績とはお互いあまり会話をしないし、目も合わせない。私の観察では、彼は毎朝毎晩気付くとチョココロネばかりを食べている。一日に5個以上は口にしているはずだ。とにかく好物なのだろう。変な人だ。
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