企画部屋

□アンケート1位
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 夏生まれは夏に強いだろうとかいう話は根拠の無いでまかせだと身を持って実感する。
 熱気と水気を含んだ重たくて生温い空気と喚く蝉、高く突き抜ける空の蒼に黄緑がかった緑葉と真っ白な綿菓子の雲、触れる空気も耳に入る音も、そこいらを彩る色も何もかもが身を襲う。
「あつ…ぃ……」
 誰もが言うわかりきった台詞を言わずにはいられない。
 昼を過ぎた太陽はその日差しを弱めては行くが、アスファルトに溜まった熱気が冷めるにはまだ早く、暑さはさほど変わりない気がする。
 それと、冷房の室外機の熱気が気温を更に高めるらしいが、この現象を何と言ったか、昨日たまたま見たニュースでやっていたのだが、喉につかえて言葉が出ない。出そうで出ない言葉が気持ち悪いが、蒸し風呂状態で沸いた頭では考える事さえ億劫だ。
 ならクーラーを着ければ良いのだが、ここの家主は学生の一人暮らしに贅沢品に割く金は無いと言い切った。
「暑いって」
 頭の天辺から湧き出す汗が額、頬を伝い顎から腹に落ちる。
「なぁ、あつ…」
「うるさいなぁ、暑いのは同じ部屋に居る僕も同じなんだ。それに暑い暑いって、その言葉を聞いただけで部屋の気温が上がりそうだから止めろ」
 
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