Story
□First Love コ哀
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「久しぶりだね?蘭姉ちゃん」
七歳の子供のままで止まっていた私の中のコナン君が目の前で十四歳に成長している。
「本当久しぶりね。コナン君」
新一が死んだと聞かされた十七の時、私は本格的に空手を学ぶ為に大阪に渡った。
あれから七年。
コナン君は本当に新一にそっくりで違うのはふち無し眼鏡をしている事と、
「…こんにちは」
「こんにちは。哀ちゃん。久しぶりだね」
コナン君の左手がしっかりと握る手の主。
灰原 哀ちゃん。
「付き合ってるの?」
私が聞くと哀ちゃんは顔を真っ赤にした。
コナン君は照れ臭そうに、
「うん。そうなんだ///」
はっきりと頷いた。
顔は同じでも、こういう所は新一とは違うんだね。
「…ねぇ、哀ちゃん。今、幸せ?」
昔の哀ちゃんは、コナン君から聞いた所によれば両親が事故で死に、お姉さんも死んだそうで、いつもどこか、悲しげで辛そうだった。
だから、哀ちゃんが幸せに過ごしているのか、少し心配だった。
哀ちゃんはチラッとコナン君を見て、コナン君は哀ちゃんに頷いた。
そして哀ちゃんは、
「ええ。とても幸せよ?」
そう言ってニッコリと笑った。
私は哀ちゃんがそんな風に笑う姿を初めて見た。
コナン君は嬉しそうに、少し照れながら哀ちゃんの頭をコツンと突いて、哀ちゃんが怒る。
そんな幸せそうな二人に私も笑みを浮かべた。
「…よかった。二人共幸せそうで」
「何言ってんの?蘭姉ちゃん。蘭姉ちゃんだって幸せでしょ?」
コナン君が私のお腹を見た。
私のお腹には赤ちゃんがいる。
大阪で知り合った彼と結婚して、もうすぐ臨月。
「…うん。私も幸せよ」
私はお腹に手をあてて二人に頷いた。
「赤ちゃん出来たら見に来て?」
私は二人を誘った。
二人は同時に頷いて、
「必ず行くね」
そう言って、帰って行く。
その二人の姿を眺めながら私は少し悲しくなる。
本当は知ってる。コナン君が新一だって。
でも言えなかった。
だってその時には彼はもう哀ちゃんに気持ちが向いていたから。
だから私は何も言えなかった。
「バイバイ。新一。私は今、本当に幸せよ?」
彼との未来は見れなかったけど、私は愛してくれる人を見つけて宝物を授かったから。
だから、貴方も幸せになってね?
私の初恋の人。
END...