拍手ss&捧げもの

□拍手お礼ss
5ページ/9ページ

『涙の道筋を辿る指』

彼女がこちらに来てから変わらない。誰にも譲れない自分の場所。

「……また、泣いてたのか……。」

眠りに就いた頃、見回りと称して彼女の部屋に入るのはその、自分の居場所を守るため。

自分のエゴであることは分かっている。

それでも。

彼女の頬に出来た涙の後を撫で、そっと零した。

「誰かに見せたくないんだ。君が泣き顔を見せてくれるのは俺だけだと……そう、思いたいだけなんだ……。」

醜い心が、真っ白な彼女を繋ぎ止めようとあがく。

必要とされていると思うことで、自分が彼女を必要としていることを隠そうとしている。

「泣くのは、俺の前だけにして……。」

全部受けとめるから。
どうか、一人で泣かないで………。

頬に一つ口付けを落とし、顔の前で握られた彼女の手を取り、その手の甲を自分の頬に当てた。



Fin
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ