ヘヴィ・デイズ
□第1話*can U xxxx me?
1ページ/12ページ
手伝ってほしいんだけど。
――キャン・ユー・ヘルプ・ミー?
こう訊かれたら、「喜んで」と可能不可能関係なく、その人のために最善を尽くさねばならない。困っている人を見つけたら助けてあげる、というのは誰しもが子供の時から言われ続けていることだ。
さて、今――
俺に向かって、手伝ってほしいと口にしたのは、どう見ても困っていなさそうなお兄さん。とびきりの笑顔で俺が「はい」と答えるのを待っている。
事実、今この場に「はい」以外の答えは用意されていない。
しかし、俺には即答できない理由がある。
なぜ、って。
それは、時間がないからでも道徳教育の失敗でも、もちろん俺がひねくれているからでもない。
お兄さんの手には日本刀。
切っ先は、俺の鼻先。
――これ以上の説明は必要だろうか。
どう見ても、誰の目からしても、この状況での「手伝ってほしいんだけど」は悪質な脅迫以外の何物でもない。
本来、この場で正しいのは――
ヘルプ・ミー
と俺が命乞いすることだろう――!
どうしてこんなことになってしまったのか。
事の始まりは、つい15分ほど前に遡る。
.