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□祭り
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「おい、ほたる!!!どこいったんだよ!?」

「あ・・・ゆんゆん。こっちこっち」

「こっちこっちじゃねーよ!!!さっきから勝手に動くなって言ってんだろ?・・・つーか、聞いてんのか?おい」

「キレイだよね・・・・・」

「はぁ・・・・・」

 ほたるは遊庵の話など全く聞かず、目の前にあるものに夢中になっていた。
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 この日は、近くの神社で祭りがあるというので、祭り好きの遊庵が無理矢理ほたるを連れてやってきていた。
 神社についてみれば予想通り、大勢の人が来ていた。
 始めは嫌そうにしていたほたるも出店などで興味を惹かれたのか、一人で自由気ままに動き回ってしまっている。
 そして遊庵は迷子になりかけのほたるを探すということを先程から繰り返していた。
 そんな遊庵に迷惑掛けまくりのほたるの方はというと、全く回りを気にせず遊庵の言葉も聞いていないという状態だった。

 今、ほたるは目の前で風に吹かれ揺れている風鈴に夢中になっていた。
 遊庵が、ほたるがずっと見ていた物を指し、

「ほたる、それがそんなにいいのか?」

と聞いた。それにほたるは無言で頷いた。

「おい、おやじ。この風鈴くれ」

「おっ、こいつだね?・・・はい、500円な」

 遊庵は店のおじさんにお金を渡し、受け取った風鈴をほたるに渡した。

「別に欲しいなんて言ってないのに・・・・・」

「あれだけ欲しそうな目で見てたくせによく言うよなぁ?ま、せっかく俺が買ってやったんだから大事にしろよ?」

 遊庵はそう言うとほたるの返事を聞かずに、風鈴を持っていない方の手を掴み人混みの中を歩き出す。

「あ・・・・・」

 急に手を引かれたほたるは自然に手を引かれていく形になった。
 それでも、密かに風鈴だけは落とさないようにしっかりと無意識のうちに握っていた。それと同時に、遊庵と繋いでいる手にも力が入った。

「?・・・可愛いとこあんじゃねーの」

 そう呟いた遊庵の声は後ろにいるほたるには聞こえなかった。
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「だぁー!!!ほたる!!!てめぇ、いきなり人に水かけんじゃねー!!!」

「やーいやーい。ゆんゆんのドジ〜」

「この・・・・・待てコラほたるっ!!!!!」

「待つわけないじゃん」

 祭りから少したったが、これといった変化もない二人が今日もこの暑い夏に元気に追いかけっこを始めた。

 窓から二人の姿が何度か横切っていくのが見える。
 そしてその窓のところには、風鈴が夏の太陽を浴びながら風に揺らされ、涼しげにチリン、チリンと鳴っていた・・・・・



END

 

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