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□おいでよ
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「気になるならちょっと見ていきますか?」

あまりに林を見ていた宍戸を見て、興味を持っていると勘違いした鳳はそう、話し掛けた。

「………別に見なくてもいーだろ」

そう言うと視線を外し、コンビニに向かおうとした。しかし、

「あ、ひょっとして宍戸さん肝試しとか苦手ですか?」

「は?別に苦手じゃねーよ」

「じゃあ行きましょうよ〜。ほら、ちょっと見るだけですから」

「ちょっ!!手離せよ!!」

こんな強引に連れて行こうとする鳳は初めてだった。
宍戸が本気で嫌がっていれば“分かりました”と言って引くのが常だった。

鳳は嫌がる宍戸の手を掴み、林の中へと入っていく。その間にも宍戸は林に行くことに対して抵抗していたが、手を掴む力が強く、振りほどくことができなかった。





林の中は宍戸が想像していたような暗さではなかった。木と木の間からは光が射し込み、道も大人二人が並んで歩いても余裕がある道幅だ。しかも真っ直ぐな一本道で迷うということはないだろう。

そう思った宍戸は、無意識に握り締めていた手を開き、そっと息を吐き出した。


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