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□おいでよ
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林の真ん中辺りまできて、鳳は立ち止まり、周りを見渡した。

「へ〜、良いところじゃないですか。こういう所って和みますよね」

「まぁそうだな。ほらもういいだろ?行こうぜ」

そう言って掴まえられていた手をほどいた瞬間、宍戸の周りの景色が一変した。




射し込んでいた光が無くなり、林と呼べる木の茂りかたではなくなった。その生え方は森と言った方が合っているだろう。
まるで、光の世界から闇の世界へと、一気に落とされたようだった。


「おいっ!何だよこれ!!長太郎!?」


宍戸は慌てて周りを見渡したが、一緒にいたはずの鳳の姿が見えない。
変わりに見えるのは、空が見えないほどに枝を伸ばし、伸びすぎた枝が互いに絡まり合っている木々と、闇だけだ。

自分の足下ですら見えない。それなのに、周りに生えている木だけは、闇の中に浮かび上がるように見える。
そのことがより一層、その空間の異質さを出していた。


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