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□イルカのゆめ
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さざ波の音が耳に心地いい浜辺。
昼下がりと夕暮れの真ん中、日の光はやわらかく風も気持ちいい。
夏の、穏やかな時間。
少年はそんなあたたかい時を、ひとり。
とぼとぼとさみしそうに歩いて、砂浜から高台へと上っていた。
そこには立派なお屋敷がある。この少年のおうちだ。
「暑い、な。」
家を見上げながらぽつり、つぶやく。まるでだれかと話してるみたいに。
けれど彼のまわりにはだれもいない。いるはずがない。
こっちを向いても振り返っても、たとえおうちに帰ったとしても、少年のつぶやきに言葉を返してくれるひとはいない。
ひとり。をのぞいては。