ウタリ
□ありきたりなこいのうた
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自分のために買ったのは結局下着類とズボンを一着。
そして修復不可能になったジャケットの代わりの物だけ。
ジャケットは予想外に良い物が見つかった。
ポケットが多く、鞄が嫌いな俺にとってなかなか使いよい代物だった。
ティラは、と言うとまだどれにするか悩んでいる。
下着類だけは購入したようだがぼろぼろになった服の代わりが見つからないらしい。
彼女が第一に気にするのは着心地、次に機能性、最後にデザインだった。
そう言っても最近の流行の物はお気に召さないらしく
「趣味が悪い」
と言って片端から避けていた。
予算の都合もあるからとさんざん悩み、そろそろ日が暮れそうになっている。
女の買い物につきあわされるといつでもこうなる。
グリ・エスタへの夜行列車の切符を買ってなお、俺は待ち惚けていた。
「ガイ、お待たせ」
「遅い」
紙袋を持ってティラが登場したのは太陽が姿を消そうとしている所だった。
嬉しそうに頬を上気させている。
「何買ってきたんだ」
「洋服。
いいのがあったんだ。安かったしね」
「そうか」
もう怒る気にもなれなかった。
足下に置いてあった食料品の入った袋をめざとく見つけ、俺の方を向いてにっこり笑った時も、
もう何も言わなかった。
「これからどうするの?」
ティラは無邪気に尋ねる。