ウタリ

□告白
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 唐突に、ティラは呟いた。
掠れてはいたが、はっきりとした口調だった。

「座れ。
それから、話を聞く」

 ティラは頷く事もなくベッドに腰掛けると視線を落としたまま黙り込んだ。
俺は先を促す事もなく窓の外を眺めていた。
 そう言えば、歌が聞こえていた。
さっきも、あの時も。
 俺は、今まで歌というものに興味を持った事がなかった。
何故なら歌というものは時代と共に移り変わるものだし
永久不変というものは、一つとしてない。
伝統的なものすら、微妙に異なってゆき、はじめと比べると大きく異なっている。

「あたしね、悪魔の娘なんだって」

 ティラは、再び唐突に言った。
囁きのようにともすれば風に攫われてしまいそうに小さな、
しかし勇気のいる、告白。

「昔、お父さんが言ってたんだ。
だからこんなチカラがあって、このチカラは誰も幸せにできないんだって」
「‥‥」

 気の利いた返事も見つからず、俺はただ黙っていた。
ティラは組んだ手にはめた、あの指輪を
長く細く白い指でいじりながら言葉を続ける。

「レイフォートさん?だっけ、あの人を傷つけたのも‥‥
さっき、あの人達を傷つけたのも、ガイを傷つけたのも、このチカラ。
本当はする気なかったんだけど、
たまに、あたしの意志とかかわりなく、発動しちゃうんだ」
「‥‥」

 何か喋ろうと口を開いてみたものの、結局は何も言えず口を閉ざす。
 チカラは使い用によっては人を幸せにできる、とか、
悪魔なんか実在するはずないのだから、とか。
そんな嘘っぽいような、言っても何の解決にならないような、
むしろ言った方が傷つくのではないかと危惧するような言葉しか思いつけなかった。
何も言わずに、指先でナフィーの花を軽くはじいた。
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