ウタリ

□白の都
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 たんたんたんたん‥‥
 列車の音が緩やかになり、ほどなくして停車する。
駅員がドアを開け、或いは人々が降り、或いは乗った。
ティラも元気よく列車から跳ねるように降りて、転びかけた。
こうして、ティラが膝小僧に擦り傷を負って列車の旅は終わった。
 クロードにどこにいく列車かをはっきりと見られてしまっている以上、
あまり長居は出来ないかも知れない。
かといってこのままどこかに行く事も難しい。
そこかしこに検問所やら何やらを設けているに違いないのだから。
 ほとぼりがさめるまでどこかに身を隠した方がよい。
しかし、
この観光客の少ないグリ・エスタに一体いつまで隠れる事が出来るのか‥‥。

「ガイ、早く行こうよ」

 不意に袖を引かれて我に返る。
そうだ、とりあえず今は動かなければ。

「そうだな。
とりあえず宿を探す」
「はい隊長」

 何気ない軽口が、心地よい。
追われている身だというのに、それを忘れてやたらと安心してしまう。
危険な事だ。
苦笑しながら、思う。
 とりあえず歩きながら
適当な宿を探すという事になり、駅構内からでた。
 白い。
太陽の光を緩やかに反射させる白の眩しさに眼の痛みを覚え、手で日陰を作ってやる。
 白の街。
かつてこの地が聖なる王国の王都であった時、
その神聖さを視覚で確認できるようにとこの街は白で統一された。
古い建造物の歴史的価値もさることながら、この美しさは一見の価値がある。
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