ウタリ

□死の灰
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 追って外に出るがティラはその場所に立ち尽くし、ただ空を見上げていた。

「雪」

 白い欠片が、ひとつふたつ。
青い空からひらひらと舞い落ちる。

「これは雪じゃない。
灰だ」
「灰?」

 驚いたように俺を振り返り、そうして灰の一欠片を手に取ろうと手を伸ばす。
 白の街に舞い降りる、白の灰。

「あの山が見えるか?
ユラ山脈だ。
この街にはあの山から
一年の半分以上山颪が吹き降りる。
山脈の裏側にある工業地帯で発生する白い灰が、山颪に乗ってこの街に降ってくるんだ。
有害な成分を沢山含んだ灰がな」

 白の灰は、いつしか死の灰、もしくは死の雪と呼ばれるようになっていた。

「聖なる都と栄え、遷都後も歴史的価値があると持てはやされたグリ・エスタも
この灰が原因となる公害におかされ人々は神聖な土地を棄て去った」

 全ては、人が。
 全ては、人の愚かさが。
 時には自らの作り上げた『神』と言う名の虚像を汚す。
 酷く滑稽で、酷く愚かしい、そして酷く人間じみた、行為。

「この場所は神に愛された土地なんかじゃない。
人間達が愛し、そして放棄した土地だ」
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