ウタリ

□地下遺跡
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 懐中電灯が暗闇を照らす。
もとは白かったはずの壁も、緑色の苔に覆われていた。

「大丈夫なの?」

 ティラが心配そうな声を上げる。

「だあいじょうぶだって。
オレにまっかせなさーい」

 得意げに言い張るカゼリトの声が
余計に不安をあおったのか、ティラは俺の腕を持っていた手にさらに力を込めた。
ジャケット越しとはいえ爪が食い込んで少し痛い。
 カゼリトの案内した「隠れ家」とは地下遺跡の事だった。
あの夜一度カゼリトは帰り、次の日一日中宿から出るなと言われた。
日が暮れるとなかなか大きな荷物を抱えたカゼリトが迎えに来て夜の闇の中をすすんだ。

「地下遺跡って、ここ下水道じゃないか」

 ティラが不満を述べるとカゼリトはにやりと不穏な笑みを浮かべてこちらに振り向いた。
顔の下に懐中電灯を宛い少し不気味さを演出してご満悦のようだった。

「この街の下水道が地下遺跡を見本にして建設されたコトは知ってる?」
「ああ」

 ティラではなく、俺が答えた。

「そのまま地下遺跡を使用したんじゃないかって説もあるのは、ご存じの通り」

 カゼリトはさも楽しげにその場で一回転してみせる。

「でもその二つは両方とも半分正解で半分不正解なんだよねー」

 下水道は地上と同じように白い材質で出来ている所と、赤い岩で出来ている所との2種類がある。
白い材質の場所は時たまレリーフなどが彫られているところすらあった。
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