ウタリ
□神の名の下に
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流れる風景。
深い青の空はどこまでも高く。
そろそろ日暮れだからか微かに月の姿が見て取れた。
風に砂埃が巻き上げられて、全ての風景は霞む。
荒野を走る機械車は砂煙を巻き上げながら一点を目指している。
「すまない」
今度は助手席に座って、カゼリトに詫びた。
「いーよ、いつもの事だし。
それにダチのピンチを助けなくて何が男だよ」
今日は神殿でセニム・クリムト=カゼリトが正式にトゥーラへ詞をあげる日だった。
そのためにカゼリトはグリ・エスタに来たのであり、僅かな時間を割いて俺たちを助けてくれた。
それなのに今回と来たらその大切な儀式をほったらかして
ティラを助ける為にトゥーラ・マティニのディヴァイン本部へ連れて行けと言うのだ。
カゼリトにはいくら感謝してもしたりない。
「ダチ、か‥‥」
その素直な言葉が嬉しかった。
俺を友達、と認めてくれた。
まさかカゼリトが相棒を持ってきているとは思っていなかった。
グリ・エスタは車両禁止の為に隣町のヤル・リンガーに隠して置いたらしい。
俺は今その機械車に乗っている。
「なあ、ティラちゃんとガイはデキてんの?」
唐突だった。
「いや」
「マジで?
絶対デキてると思ってたのに」
アクセルを全開にしながらカゼリトは言う。
違う。
ティラは、そんなものではない。
「じゃあ、この子は?」
カゼリトが指し示す俺とカゼリトの間には、ナフィーが座っていた。
じっと窓の外を見つめこちらを見ようとはしない。