ウタリ
□もしも願いが叶うなら。
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空が、赤い。
あまりにもあっけなかった救出劇は、幕を閉じた。
夕暮れが白い建物を赤く染めて、
俺たちは上部の人間しか知らない非常出口から外に出て荒野の土を踏みしめている。
こうして、空を見上げていた。
「クロードさん、何だったのかな」
「‥‥クロードは、多分お前の‥‥」
言おうとして、止める。
クロード自身それを望んでいないだろう。
「腕は。
大丈夫なのか」
「うん、かすっただけみたい」
話をすり替える。
ティラは笑っていた。
それで善いのだろう。
クロードも、自分を恐い目に遭わせた本人が、父親などと知って、恨まれたくないだろうから。
「これからどうするの?」
「これから、カゼリトと落ち合う為にネイビスに行く」
「ネイビス。
ガイが言ってた所だね」
ティラが手を叩いて喜ぶ。
これからしばらく徒歩で荒野を渡らなければならない事は伏せておこう。
少し可哀想に想いながら決めた。
しばらく歩いていると、ティラはゆっくりと立ち止まった。
さすがに疲れたのだろう。
「どうした?」
ティラは答えなかった。
答えないまま、静かにディヴァインを振り返る。
しゃんと、背筋を伸ばして、まっすぐな瞳で、白い塔を見つめた。