ウタリ

□「神のゴミ捨て場」
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 態勢を低く持ち直しながらじんじんと痛む左手を見る。
 あるいは折れているのかもしれないと、苛ついた頭の隅でそう思った。
 ただ広がる荒野の代わり映えのしない景色が前から流れてきて後ろに消えて行く。
あまりスピードを出していないのがはっきりと分かるような流れ方だった。
このままではいつになれば目的地に着くのか分かったものではない。
 俺は文句を言おうと体を元の位置に戻した、そのときだった。
 機械車が大きく向きを変え、アクセルを全開にして走り始める。
 走り方はプロのそれで、
こういう状況でなければ一言二言感嘆の声でも上げてやるところだったが、
俺はその大きな方向転換の際にかかった遠心力に耐え切れず強かに身体を車に打ち付けた。
 後部座席と言えど大したスペースがあるはずもなく這いずるようにしてシートに戻る。
運転手はシートベルトをした方がいい、などという客の体に対する心配はないようだった。
確かに、この機械車の後部座席にシートベルトなど存在していないのだが。
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