ウタリ
□「神のゴミ捨て場」
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なぜこの音に今まで気づかなかったのだろうか。
原因としては、なぜだか今は切られているラジオが考えられる。
それから無駄にうるさいこの機械車自身にも。
まさか自分がこんなものに引っ掛かるとは思っていなかった。
不機嫌に任せて舌打ちする。
街で格安に客をつかまえ、盗賊の仕業に見せかけて客を殺して金目の物を奪い取る。
運がよければ殺されずに人買いに売られるのだが、
俺のような成人している男など誰も買いはしないだろう。
命が助かったとしても荷物も全てはぎとられ、荒野に置き去りにされるのがおちだ。
やはり金を出し渋ったのがいけなかったらしいと今更ながらに考える。
したたる血液が邪魔で、乱暴に袖で拭った。
しかし傷口に触れたらしく鋭い痛みに顔をしかめ、舌打ちする。
これくらいの傷が何ともないと言え、痛むものは痛む。
この位置からだと目指していた街に行くよりも、西にある町に行く方が賢明だ。
ザックをかつぎ、視線を周囲に巡らせる。
ドアにはロックがかかっていて、どうせ勝手に空けられないような細工が施されているに違いない。
それ以前にこの暴走したようなスピードと運転で、外に出ようなどと考える人間はまずいないだろう。
そうでなくても周囲は機械車が取り囲んでおり、
機械車から飛び降りたとき奇跡的に無傷でも、どうせ捕まってしまう。