ウタリ

□眠らない街
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「これからどうするんだっけ。
ごはん?」
「まず宿を取る。
全てはそこからだ」
「分かりました、隊長」

 誰が隊長だ、と心の中で呟きしかし微笑みを隠せない自分がいた。
それは何故かあまり不快ではなくむしろささやかな喜びを感じさせる物である事が不思議だった。
 トリ・トルにはヤル・エルリのようなあまりにも安くあまりにも治安が心配されるような宿はない。
一番安いのはカプセルホテルなどと呼ばれるところだが
よほど金に困っていなければその様な所に泊まろうという気など起きず、
結局金のない学生達が卒業旅行で泊まるような、部屋は普通でサービスは悪い宿に泊まる事にした。

「部屋同じでいいか」
「へ?」
「ツインでいいか、部屋」
「あー、いいよ。お金勿体ないしね」

 予想以上にあっさりとティラは了承し、警戒心を抱くわけでもなく
自分の分の荷物を担ぎ上げている。
もう少し他の反応があっても良さそうなものだったが。
(断っておくが俺にそんな気はない)
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