ウタリ

□眠らない街
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 宿と言うよりはアパートとでも言った方がよいのではないだろうか。
宿帳に名前‥‥念のために偽名を記入した後部屋に行く事になった。
最上階
(と言っても三階建て)
へ渡る階段は
穴こそ空いてはいなかったものの、錆びつき、一歩踏みしめるごとに不愉快な音を立てる。
もしかしたら昔はアパートだった物を使っているのかもしれないとどうでもよい事が頭の片隅によぎった。

「この部屋かあ」

 ティラが部屋の鍵を開けながら呟く。
薄っぺらなドアが軋みながら開くとやはり予想通りアパートの一室のような部屋が現れた。
一応トイレもシャワーも付いているらしい。
 窓際にソファーが一つ設えてあり、そのソファーを挟むように二つのベッドが置いてあった。

「ガイ、お腹空いた」
「ガキかお前は」

 早々に訴えるティラにいつも通りの返答を返しながら、
いつもは使わない財布に紙幣と小銭を適当に入れる。
この重みは安心料と言う事だろう。
スリに遭わぬようにチェーンをつけながら思った。
 俺としてはもう少しゆっくりしてから食事に出かけたかったのだが、
いかんせんティラに落ち着きがなかった。
部屋にある物を全てチェックし、
そしてそれについての感想を興奮気味に言いながら部屋の中を歩き回る。
やがてそれが終わるとベッドに座りつまらなそうに足をばたつかせ口を開いたかと思うと

「お腹が空いた」

と繰り返す。
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