ウタリ
□眠らない街
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食事はティラが珍しそうに見ていたファーストフード店で済ませる事が出来た。
店で食べきる事が出来なかったフレンチフライを片手にティラは笑う。
「この街は玩具箱をひっくり返したみたいだ」
「そうだな」
実に的を射ている。
後二、三時間もすれば日が暮れてこの街はもっと無節操な光に包まれる事だろう。
その時になればこの少女はなんと言うだろうか。
宝石箱をひっくり返したようだと目を輝かせて自分に訴えるのだろうか。
フレンチフライをくわえて、ティラはある一点をすっと指さした。
俺がその指の先に目をやると服屋がずらずらと並んでいる一角が目についた。
嫌な予感がしてティラに目を向けると、
「この服、ぼろぼろだと思わない?」
ティラは無邪気な笑顔を俺に向けているのだった。