ウタリ

□ありきたりなこいのうた
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 群青に染まりかけた空を見上げながら俺は深く溜息をついてみた。

「宿に戻って、今後の身の振り方を決める」
「あっガイ、あれ何かなあ」

 先程よりも無邪気にティラは歓声を上げる。
俺の話は耳に届いていない様だった。
俺はもう一度、深い深い溜息をついた。

「少し観光していくか?」
「いいの?」
「俺は行かないが」

 目を輝かして尋ねるティラに俺は溜息で応酬する。
この地域は確かにあまり治安がいいとは言えないが、
雑多としているためレイたちに発見される心配も少ない。
ティラは世間知らずである事は間違いないが頭はさほど悪くないのだった。
その事をふまえての、結論だった。
俺が面倒になったというのが有力候補であった事も大きな判断材料となったが。

「わかった!」
「危ない所には入らない事と絡まれたら逃げる事、遠出はしない事。
守れるか?」
「当たり前じゃないか、はい」

 服の入った紙袋を俺に押しつけるとティラは跳ねる様に駆けだした。

「夕ご飯までには帰るから」

 あくまで自己中心的で他人を顧みない行動。
しかし俺はティラに不快感を抱いていなかった。
それは実に不思議な事でその様な困った行動にも苦笑一つで許せる様な、そんな清々しい幼さ。
 宿に帰ってから言えば良かったと独白しながら、それでも胸中ではそう思ってない自分が居る。

「‥‥」

 この街も、案外悪くないのかもしれない。
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