ウタリ

□ありきたりなこいのうた
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 雑音混じりの軽快な音楽を、俺の耳が捉える。
名前も知らないような女性歌手の、ありきたりな恋の歌。

  いままでわたしは
  ひとりだとおもっていたの
  こどくなんてなれているわ
  どうか
  どうじょうなんてしないで
  このままわたしは
  こどくにしずんでゆくの
  わたしのことはわすれて
  どうか
  このままひとりがいいの
  あなたはどうして
  わたしをみるの?
  そんな
  さみしげなひとみで
  ねえ
  このままどうか
  ねむらせて
  あなたを
  にくむこと
  しりたくないから
  どうかわたしにふれないで
  ことばなんてかけないで
  きっとこのまま
  ふたりはきずつく
  だからおねがい
  どうか

 澄んだ清らかな歌声。
この声は、ティラ。
 そう言えば俺が彼女の前で目を覚ました時も、ティラは歌っていた。
 命を直接紡ぐような、温かな、声で。
 そうだ、ティラはあの時何を歌っていたのだろう?
 聞いた事のないような、不思議な言葉を歌っていた。
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