ウタリ

□告白
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 ティラの、細い腕に力が、こもる。

「あたしはどうする事もできない。
あの人達が、レイフォートさん達がもっとたくさんの人を傷つけようとして
あたしを利用しているんだって分かった時、一生懸命逃げた。
これ以上嫌われたくなかったから‥‥」
「誰に?」

 俺は質問を口にしたが、ティラは組んだ手に額を押し付けて黙っていた。
 泣いているんだなと、感じた。
 それでもティラは何かを繋ぎとめようと必死に声を絞り出す。
震える声で、掠れた声で、潤んだ声で、必死に。
俺に言葉を紡ぎ続ける事だけが、唯一の手がかりだと言うように。

「でも、さっきも‥‥
レイフォートさん達から逃げるときも、チカラを使っちゃった。
そうしないと、無理だった。
使わないようにと思って逃げたのに、たくさんチカラを使ったんだよ。
大した‥‥大した、矛盾だ‥‥」

 なぜ俺はティラを連れて逃げようと思ったのだろう。
レイに追いかけ回されるのは御免被りたいし、
それならティラといるのは危険だ。
 それでも彼女の手を引いて、御丁寧に水まで買って逃げようとしたのは‥‥
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