ウタリ

□告白
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「‥‥俺は、
女神の息子だ」

 初めて。
初めて自分からその名を名乗った。
ティラの腕が強ばる。

「だから俺は傷ついてもすぐに治る。
絶対に死なないし、老いもしない」

 不老不死。
 だから俺はレイに追われ、研究の対象となる。
それが嫌だった。
だから逃げている。
しかしレイにとって俺は神の姿、存在の確認の対象でしかないし
モリスすら俺を崇拝の対象に連れて行こうとする。
 じっと花を見つめて、俺はティラに真実を告げた。

「今までたくさんの人間が死ぬのを見てきた。
見たくはなかったが、見ざるを得なかった。
見たくないから独りでいようと思ったことだって何度でもある。
でも俺だって人間だ。
独りは寂しいし‥‥何より恐い」

 ティラは動かなかった。
それでも俺は続ける。

「俺はただ普通の幸せが欲しかった。
世界中を何度も何度も見て回るより、
どこか‥‥どこか、小さくてもいいから家を持って、
結婚して、子供がいて。
そして、死んでいく。
そんな当たり前の人生を送りたかった。
女神の息子とか、そんな事を言われるよりも普通の人間でよかった。
望んでもいないのに不老不死の身体をもらっても、辛いだけ‥‥苦しいだけだ。
そんなにこの身体が欲しいならいっそくれてやるって。
ティラも、思ったことなかったか?」
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