ウタリ
□告白
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遠い昔、俺がまだまともな人間の年齢だった頃、一度だけ結婚した事があった。
それはまだ俺が不老不死だと知る前で、いや正しく言うとこの特殊な体質は知っていたのだが
本当に不老不死だとは認識していなかった頃だった。
彼女は、老いる。
子供も成長していく。
けれど、俺は‥‥
俺は家を出た。
このまま彼女らが老いていく姿を見たくはなかったし
そして確実に俺だけが取り残されると分かったからだった。
‥‥確実に彼女らを傷つけるとも知っていながら。
「あたしも‥‥
こんなチカラいらないから、普通に好きなヒトと、一緒に、いたいって。
特別じゃなくてもいいから、普通でいいって‥‥」
目を閉じる。
ティラの声は俺の背中を振動させ頭を冷えさせた。
どうしたい?
自らに問いかける。
「俺が、護る」
「え?」
幸い俺は不老不死で、怪我をしてもすぐに治る体質だった。
「ティラが普通の生活を送れる所まで、俺が連れて行く。
それまで俺が、ティラを護る」
そして俺は厄介事に慣れていた。
少しだけ危険物の女の子を国外に連れて行くことくらい、どうという事もない。
今までにもっと危険な事だってしてきたし、きっとこれからもそうだろう。
彼女は組んだ手から頭を離して俺の眼をまっすぐに見つめていた。
自分の言ってしまった事に少々赤面しつつ俺はティラの小さな手にはめられた指輪を見つめる。
正しく言うと、指輪の金剛石が明かりを反射する様を。