ウタリ

□死の灰
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「あれは遺跡だ」
「遺跡?」

 白い森の奧に、
市街地のような白い建物が見える。
それが遺跡だった。
近くの民家は、白い森と歴史的財産を守る山林監視人の家だろう。

「ギリヤ聖王国が出来るずっと昔の事だが、ここに皇国があった。
あの白い森の一帯には彼らの作った地下皇国の遺跡がある」

 実は下水道はその遺跡を使用したという説がある。
しかし遺跡は住居区などが多い為に下水道にはあまり向いていない。
見本として基礎を学ぶ為に使用した可能性は大いにあるが
事実使われている訳ではないというのが一般的な常識となっている。

「地面の中に住んでいたの?」
「ああ。
だからその国の人間は色が白くてな、力もなかったそうだ。
ただ、頭と芸術のセンスはすこぶる良かったから安全な地下に大皇国を作る事が出来た。
後で見に行ってみるか?」
「いきたい!」

 あまりの元気良さに思わず苦笑してしまう。
しかし、列車の中のティラやトリ・トルとホテルのティラなどよりは
よっぽどティラらしいと思う事の出来るティラだった。
 灰混じりの風は、あまり心地よいとは言えない。
しかし神殿を懐に抱く神聖な山から吹き下ろされる涼やかな風は
それだけで十分汗をかいた身体を冷やしてくれる。

「ねえガイ、
あれがパレードかな?」

 下り坂の先の先に、豆粒程の黒い塊が見えた。
人も集まっているようだったので、恐らくパレードと判断してほぼ間違いないと思われる。

「こんな所に来ちゃったらパレード見られないんじゃないの?」
「大丈夫だ。
パレードはこの大通りを通って神殿に来る事になっている。
一応形はトゥーラが生まれたと言われている御山への巡礼って事になっているからな」
「辛辣だなあ」

 笑いながら神殿へと足を進める。
この街で一番高い場所に位置する神殿から白い街を見下ろせば、
それは美しい風景を眼にする事が出来るだろう。
ティラを追い抜かぬよう景色を眺めながらゆっくりと坂道を上る。
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