ウタリ

□黒い男
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 食事時もそろそろ終わり。
その時間になって、ドアが開かれる音がした。
とっさにティラの頭を押さえつける。
デザートに顔からつっこむという事態は避けたようだったが
痛そうな音がした。
カウンターテーブルの角に額でもぶつけたのだろう。
心の中でだけ謝った。
 長身の男。
漆黒、涼やかな瞳で店内を窺う。
 一瞬、ぞくりと寒気がした。
男は空いていたカウンター席に腰掛ける。
俺の、隣に。

「久しぶりだな。
いや、そうでもないな」

 男は聞き取れるぎりぎりの声で囁いた。
主人に酒と軽い食事を頼むと俺に目をやる。
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