ウタリ

□依頼
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 家族が全員殺されても、自分の身体が失われていっても。
 俺たちの事を思い、全てを犠牲にしたのだ。

「ガイ」

 ティラが心配そうな目で俺を見ていた。
大丈夫だ、と言おうとした。
しかし胸が詰まって何も言えない。
紙切れに水滴が落ちた。
雨漏りかと一瞬思ったが、すぐに違うと覚る。
 泣いているのだ。
俺自身が。
 嗚咽が漏れ、口元を押さえる。
なんて、なんて残酷なのだろう。
 確かにもう長くはないと心の中で知っていた。
しかし、それがこんなにも早く‥‥
しかも、俺の責任でモリスだけでなく、モリスの家族まで。

「ガイ」

 ティラの声が聞こえた。
しかしそれでも俺は嗚咽を抑える事が出来ずに
記事を握りしめた。
 許せなかった。
 その時、
モリスは何を思っていったのだろう。
 家族が切り刻まれるその時、家族よりも俺を、俺たちを優先してくれたというのか。
 信じられない。
何故なぜまでしてくれるのかと今すぐにでも問いただしたい。
俺ならば、傷ついても何ともないから。
ティラを、この身体と引き替えにでも助けてみせるから。
 だから、お前は自分と自分の家族を大切にすべきだったのに。

「あんたらワケありって感じだったし、
ああ絶対これは関係してるなって思って」
「‥‥カゼリトさん」
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