ウタリ

□依頼
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「あたしは悪魔の娘です。
真実がどうあれ、そう呼ばれてきました」

 あたしには不思議な力があります。
その力は花を咲かせたり傷を治したりできます。
人間を傷つけて、殺す事も出来る力です。
だからあたしは悪魔の娘と呼ばれました。
 あたしはお母さんの顔を知りません。
でも、お父さんはあたしを怖がって、悪魔だ、悪魔の娘だと言いました。
どうして怖がっていたのかはわかりません。
でも、お父さんはきっとあたしの事が嫌いだったのでしょう。
そうでなければ、あたしをあの場所に連れて行く訳がありません。
 あたしはある時、お父さんに連れられて大きな建物に行きました。
その場所であたしとお父さんは別れて、あたしは小さな部屋に入れられました。
 あたしはそこで鼠として扱われました。
「実験用鼠」として数々の実験をされました。
 恐い思いをした時に力は暴走してしまいました。
研究員達はあたしに恐い思いをさせて力を無理矢理発動させ、脳波等を色々と調べました。
 身体をすべて調べられた事もありました。
何か普通の人間と変わった器官があるのではないか、
どこか以上に発達していたり、退化したりしているところはないか‥‥。
 恐かった。
神の名を欲している人間達が、「神」と名乗る彼らが、恐かった。
 花を咲かせたところで、その植物の寿命を短くしただけに過ぎません。
 傷を治したところで、その人の命を削っただけに過ぎません。
 彼らの時間を少し早めて花を咲かせ、傷を治しているだけなのです。
 それを知らない彼らが、恐くもありおかしくもありました。
この人達は何も知らずに
「神様ごっこ」をして遊んでいるようなものだと思うと、ひどく滑稽ですらありました。
 あたしはある時、彼らが私の力を使って兵器を作ろうとしている事を知りました。
あたしは逃げようと決意しました。
この場所にいても、人々を不幸せにするだけだと分かったからです。
 誰も傷つけたくない。
そう思って、あたしは逃げようと思ったのです。
 けれど逃げる時、あたしは恐いと思ってしまいました。
力が抑えきれず沢山の人が死にました。
怯えながら逃げました。
時々力が暴走しました。
 あたしは三ヶ月かけてヤル・エルリまで逃げました。
手伝いのような仕事をして、二週間程何もない素敵な生活が送れました。
そしてあたしは手伝いでトゥーラ・マティニに出ました。

「そこで、倒れているガイを見つけました」

 ティラは一旦息をつくとまたしゃべり出した。
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