ウタリ
□地下遺跡
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「つまりはじめ地下遺跡をそのまま加工しようとしたが
それでは補えないところが出てきて仕方なしに新しく作って繋ぎ合わせたって事か?」
「ご名答。
でも遺跡も街の全体にすっぽり収まったワケじゃなくてはみ出たところもあったワケ。
ずっと遺跡と下水道の区別って全然してなかったんだけど
遺跡が世界遺産に指定されちゃったモンだから慌ててしきりを作ったのさ」
「じゃあここから遺跡に行けるって事なんだね」
「ご名答」
じゃぼりと不気味な水音が響く。
びくりと身を固くしたティラに笑いながらカゼリトは下水道を進む。
ごうごうと水が吠え、獣の鳴き声のような音が暗黒にこだまし、
カゼリトの声すらようやく聞き取れる程度だった。
腐臭にも似た悪臭が鼻をつき、嗅覚の機能を麻痺させる。
この場所で襲われれば、気付くことなくティラを攫われてしまうかも知れない。
ティラの手の感触を確かめながらゆっくりと足を進める。
赤い岩で出来た下水道が終わりかなりの時間が経った頃、白い壁に不自然に黒い壁が現れた。
急ぎで作られた、仕切り。
「ここの鍵は森林監視人の家と神殿の管理事務室にしか無い」
そう言ってカゼリトは黒い壁に彫られた紋章の中心部をスライドさせた。
鍵穴とおぼしき小さな穴が現れる。
その穴に、壁の紋章と同じ紋章をモチーフにしたやたらと重そうな鍵を押し込み、ゆっくりと回転させる。
重たい音が響いて、鍵が開いたのだと確認した。
「こっから先は力仕事だから」
目で俺も手伝うように促され黒い壁の前に立つ。
触れてみると冷たく、想像以上に重たそうな材質だった。
カゼリトは壁の右端に立つと、上から下まで続く何とか指の先が入るかという程度の一本の溝を指さす。
「力仕事」
「分かった」