ウタリ
□地下遺跡
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カゼリトはなにやら壁の方を窺いながらその辺を歩き回る。
「オレは一旦外に出て伝令役でもしようかと」
「またあの扉開けるの?」
「ああ、大丈夫。
中からしか見つけられない出入り口があるからそっから行き来するつもり。
後は中から鍵でもかけといて、んであんたらに開けてもらえば問題なしっしょ」
そう言うとカゼリトは自分の懐中電灯でぐるりと周囲を照らした。
苔生した壁に慎重に触れ、扉がないか探り始める。
「扉があって、階段があんの。
元々ここに住んでた人って外でないから
あんまり分かり易いトコにはないと思うんだけどねえ」
ティラがふうんと気のない返事をして腰を下ろした。
その背中の位置には、彫刻された外の景色。
否、楽園を描いた窓の様だった。
窓の部分を大きく取った扉を彫り、その窓に当たる所には美しい情景。
森、山、湖、丘。
花々が咲き乱れ小鳥の舞う楽園。
「ティラの後ろは?
そうじゃないのか」
俺がティラを指さして言うとカゼリトは急に光をティラに向けた。
突然の光の襲来に目を灼かれたらしいティラは
小さな叫び声を上げて手で目を守った。
しかしカゼリトはそれに気を祓う訳でもなく、
ああ本当だそれじゃんと嬉しそうに光をぐるぐる動かす。
「じゃあティラちゃんが座ってるのがかつての鍵ってコトかな?」
言われ目を向けると確かにティラの尻の下には長方形の石があった。
端の方が折れているがこれで中に開かない様にしていたのだろう。
「女神の娘と悪魔の息子」
ぽつり、カゼリトが言った。