ウタリ
□ナフィー
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暗闇の中、光に慣れすぎた目はあまりにも頼りない。
幾度も壁にぶつかりながら、何かが身体にまとわりついたかのように、思うように足が進まない。
それでも、走る。
「ティラ!」
転びそうになりながら、黒い壁のある一角にたどり着いた。
「ティラ!」
どうしたの、ガイ。
花見つかった?
そんな風に笑いかけてくれたら。
見つかって無いじゃないかと苦笑してくれたら。
「ティラ‥‥」
そんな幸せな事はどこにもなかった。
欠片すら、落ちていなかった。
白い壁のあちこちが巨大な爪に削られたように崩れ落ち、
赤黒い染みが幸せを塗りつぶすかのようにべっとりと床一面に広がっている。
絶望にまかせて、掠れた声が漏れた。
「ティラ」
「何ですか」
突然、闇から声がした。
その声はティラの声、そのものだった。