ウタリ

□ナフィー
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 ゆっくりと、振り返る。
其処に立っていたのは白い少女。
 薄茶色の長い髪。
黒い大きな瞳。
利発そうな目の輝きも発達途中の胸のふくらみも相違ない。
ただ、ティラより僅かに幼い。
瓜二つと言うには語弊があった。
なぜならその少女はティラよりも一つ二つは幼く、
輪郭にも子供特有の丸みが残っているし身長だって幾分低い。
血の繋がりがある、というのが一番正しい見解かも知れない。

「‥‥ナフィー?」
「どうか、しましたか」

 少女が口をきく。
ティラよりも少し高い声。
しかし、冷たく硬い声。
 なぜこの少女が此処にいるのか。
トリ・トルで別れたあの少女が。

「捜しているのでしょう、花を」

 ナフィーの左手が俺に差し出された。
手には、蕾。
まだ若い草が握られていた。
いくつかあるその蕾は堅く閉じられており開花するにはまだ数日かかりそうな様子だった。
しかし。
 彼女が花を持った左手に力を込める。
否、実際に力を入れた訳ではないのだろう。
けれど確かに何らかのチカラを、加えた。
 そしてその蕾はゆっくりと膨らみ今にも咲きそうな所で動きを止めた。
 左手には、その薬指には、何もつけられてはいない。

「捜しているのでしょう、彼女を」

 途端、蕾は開き真白な花を咲かせた。

「ガイ」

 彼女は軽く首を傾げる。
俺に決断をしろと、迫ってくる。
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