ウタリ

□神の名の下に
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 そう、俺はナフィーの案内でここに来ているのだった。
カゼリトも巻き込み、申し訳がないとしか言いようがなかったが
カゼリトはまったく気にしない様子で機械車を転がしている。

「ティラは無事なんだな」
「トゥーラ・マティニは、ご存じですか」

 俺の問いかけには無視して、静かな声でナフィーは呟く。
カゼリトがご存じだと軽く返すとようやく前方を見た。

「トゥーラ・マティニは神のゴミ捨て場。
それは真実です」

 神に見捨てられた者達の集う場所、それがトゥーラ・マティニ。
だから新たな神となろうとしている彼らディヴァインは
この場所を本部に選び、そして実験を行っている。

「アトリグさんは私を見た事がありますか」

 いや。
カゼリトが答えるとナフィーは続けた。

「私はあります。
恐らくアトリグさんが記憶にないだけで」

 カゼリトは答えようとはせず煙草の灰を落とす。
アトリグと呼ばれるのが気にくわないのか、それとも記憶を探っているのか。
その視線は心なしかいつもよりも厳しい様に感じられた。
ナフィーは俺がカゼリトの機械車で行こうとした時、
何も言わずに俺とカゼリトの間に乗り込んできたのだ。
監視役と言う事だろうか。
しかしレイやクロードの姿も見あたらない。

「ディヴァインが彼女を量産しようとしていた事はご存じですね」
「ああ」

 今度はカゼリトも返事をした。
量産。
まるで物の様な言い方だった。
しかし連中にとってティラはそれほどの価値しかないのであり、オリジナルモデルとして十二分の価値があるのだ。
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