ウタリ

□神の名の下に
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「私はその成功試作品第一号です」

 ナフィーは先程の花をすっと前に押し出して来た。
か細い腕が、花を握っている。

「ガイならご存じですよね、
力を使うごとに、彼女の命がすり減っている事」

 熱。
カゼリトが言った。
煙草を膝の上に落としてしまったらしい。
短くなったそれを機械車の灰皿に押し込むと、また新しい煙草に火を付ける。
 白い花は開ききっていて盛りだと分かった。
甘い様な、涼やかな様な。
そんな花の香りが感じられる。
しかしその花はみるみる内にみずみずしい白の花弁の端から
茶色く萎れてゆき葉も乾燥し
一分とかからずに枯れきってしまった。
 俺は唖然とその光景を見つめる。
ナフィーはその枯れた花を見つめていた。

「花を咲かせるのは、花の持つ時間を進めます」
「ティラが言っていた」
「人の傷を治すのは、その人の持つ時間を進めます」
「それも」
「私は時間を進められた生き物です」

 言葉に、詰まる。
 ナフィーが時間を進められた生き物?
進められた、と言う事は自分で行った事ではないという事か。
では、ティラの手によって成長を促されたという事なのか。

「私は普通の人間の
倍の早さで成長します。
私は生まれてから
まだ七年しか経っていません。
見えますか?」

 彼女はワンピースの袖をまくって左腕を俺に見せる。
確かに、七年前の日付がナンバリングされていた。
その下にはディヴァインの紋章と名前も刻印されている。

「私は彼女の複製です。
そして彼女の能力が使用できるかを早く知る為に、
ある人物の提案によって私と私の姉妹達は彼女の手によって時間を進められました」

 ナフィーはティラの事を彼女、としか呼んでいない。
ふとその事に気付く。
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