ウタリ

□神の名の下に
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「そして早められたままの早さで、私と私の姉妹達は成長を続けています」
「誰の提案だったんだ?」

 このままだとナフィーと、ナフィーの言う彼女の姉妹達は
普通の人間の半分の寿命で死んでしまうのだろう。
レイか、クロードか。
二人ともこのような残酷な事を言いそうだが
そのまま成長し続けるとは思っていなかったに違いない。
知っていたとしても、その提案を曲げることなど、しそうにないが。

「グラント=アトリグ・セリミア=カゼリト3世。
ディヴァイン第一の出資者である彼がそれを提案しました」

 熱。
カゼリトが言った。
煙草を膝の上に落としてしまったらしい。

「‥‥え?」

 言葉を失う。
グラント=アトリグ・セリミア=カゼリト3世が第一の出資者で、その提案者?
カゼリトは落とした煙草をくわえなおして大きく紫煙を吸い込んだ。

「嘘、だろ?」
「いいえ。真実です」

 グラント=アトリグ・セリミア=カゼリト3世は
不思議な力を持つ少女が居ると知ると、大いに興味を抱いて多額の資金をその研究につぎ込んだ。
そしてその少女の能力を研究し、
もしかすると少女の身体がもう長くないかも知れないという事を知ると彼女の複製を作る事も提案した。
そして早い段階から能力の有無を知る為に少女の力を使用して
複製達の成長を促す事を提案し、そしてまた多額の資金を投資した。
五体の複製の内一体しか力を振るう事が出来ず、その上に少女の持つ力に遥かに及ばないと知ると
グラント=アトリグ・セリミア=カゼリト3世は彼女らの前で呟いたという。

「失敗だな」

 カゼリトは、機械車を止めた。
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