ウタリ

□神に愛された者の末路
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 レイはナフィーの腹を踏みつけた。
ナフィーはごめんなさい、許してくださいとただ許しを乞う。

「ねえガイ、これを見たら分かると思うけど、鼠って元々髪が黒いんだよ」

 天使の様な笑顔でこちらを見返り、俺は後退った。
足はまだナフィーの腹の上にあり、その表情は彼の行動に酷く反したものだった。

「でも力を使う内に色素が抜けてね、こんな色になったんだ」

 再び髪を掴む。
ナフィーは痛みに顔を歪め小さく声を漏らした。
その瞬間にレイの蹴りが襲う。
煩いんだよ。
ごめんなさい‥‥。
 レイがナフィーの頭を強く壁に打ち付ける。
崩れかかった身体を、顎を掴んで引き上げた。
苦しそうな呼吸が聞こえる。

「お前は僕の忠実な人形なんだろう?」
「はい、そうです‥‥」
「だったらどうして僕のガイといるんだい?
僕は嫉妬のあまりお前を殺してしまいそうだよ」

 俺は目の前でおこる出来事をただ呆然と見つめていた。
レイが人の命を何とも思わないのは知っていたし
残忍な方法で人をいたぶるのが好きだという事も知っていた。
しかし、しかし今この目の前で繰り広げられる光景はあまりにも突然で頭がくらくらした。

「そうだ!」

 レイは大きな声を上げた。
俺は壁によりかかって立つのがやっとで、痛む頭でレイの輝く顔を見た。
ナフィーはどうでも良くなったのか、放り投げられた玩具の様に床に転がっていた。

「あの鼠を助ける為に来たんだね、可哀想なガイ」
「‥‥ティラは」

 掠れて声が上手く出なかった。
喉の渇きが酷かった。
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