ウタリ
□ちちおや
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廊下に出ると、また花が咲いていた。
白い綺麗な花だった。
「ティラ」
呼ぶと、一つ、また一つと花が咲いていく。
「ティラ‥‥」
白い花は確かに一本の道を造っていた。
それをたどり、道を進む。
俺は一人じゃない。
カゼリトも、モリスもいた。
何よりティラがそこにいる。
この世に生を受けた事。
その意味を今初めて分かったような気がした。
女神の息子が悪魔の娘を救うなんて、と笑われるかもしれない。
それでもいい。
ティラの為なら、この命を投げ出しても。
こんな腐った命でいいのなら、いくらでも投げ出してやる。
「ティラ」
呼ぶ。
階段を上り、五階に来ていた。
僅かに。
僅かに歌が聞こえる。
不思議な言葉の、ティラの母親からの贈られた、歌が。
あの時、俺を目覚めさせた歌が。
「ティラ!」
白い壁に何の変哲もないドアが並ぶ。
一番奥のドアを、殆ど蹴破るようにして部屋の中に飛び込んだ。
やはり白い部屋。
病院のような、真っ白な部屋。
「ティラ!」