ウタリ
□もしも願いが叶うなら。
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悪魔の娘と蔑まれ、恐怖され。
実験鼠として扱われ。
チカラを使えば星の命か自らの命を削り、そしてチカラを作用させた物の命すら削り。
世界から嫌われた少女。
世界から死を望まれた少女。
それは、俺とは対極に位置する願い。
対極に位置しながらとても近くの存在である少女の願い。
そして、人間として当然あるべき願い。
人が産まれてくる時に泣き叫ぶのは、母親の安全な胎内から引きずり出されて
過酷なこの世界に出てくる事を哀しむからか。
それとも、希望に満ちあふれ生きる歓びに沸き立っているからか。
一般的なように苦しくても苦しくても生きようと呼吸しようとあがいているからか。
どれでも、構わない。
人は産まれ出してきた時から喜びも悲しみも希望も絶望も、
全てを背負って生きる事を運命付けられているのだから。
喩えそれがどんな生き方であろうと。
それが幾ら短くとも、吐き気を覚える程長くとも。
「ガイ」
ティラは言った。
顔はこちらを向いており、ディヴァインは見ていない。
透明で、深い。
透明なのに深すぎて奧の見えないその瞳で、俺を捕らえていた。
「あの建物を、壊す」
俺はティラの言葉をしばらく理解出来ずにいた。
建物を、壊す?
どうやって?
「もう命が長くないって事、知ってたよ。
結構前から気付いてた」
ティラの髪が、風に揺れる。