ウタリ番外編
□トリ・トル旅行記
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その後青年は少女に淡い桃色の服をいくつも薦めた。
「‥‥ねえ、あなたピンクが好きなの」
少女は黒のワンピースを手に持って言う。
すると青年はきょとんとして首を振った。
「オレは緑が好きです」
「‥‥そう」
「でもナフィーさんはピンクが似合うかなぁって」
屈託もない笑顔。その言葉に偽りはないだろう。
「じゃあ姉さん達は何色が似合うのかしら」
偽りがないからこそ、少女は青年を傷付けたくて仕方がなかった。
皮肉の言葉を、無表情で青年に投げつけたくて仕方がなかった。
青年はにこにこと笑いながら真っ赤なワンピースを手に取る。
「お姉さん方は赤とか黒が似合いますよ。ナフィーさんとは違って髪が黒いですから」
しかし青年は全く気にした様子もなく相変わらずの笑顔。
無理をしたようにも見えないので本当に思った事を言っているのだろう。
純粋で、単純。
彼は全くその通りの人間だった。
「‥‥これでいいわ」
「はい、分かりました」
少女は青年が始めに手に取ったワンピースを指した。
青年は満足そうに頷いて精算に行く。
青年と少女‥‥エドとナフィーは、つまりこういう二人だった。