ウタリ番外編
□トリ・トル旅行記
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トリ・トルの治安は、決していいものではない。
だからエドはナフィーの手をしっかりと握りあちこちをまわる。
「あのお店可愛いですよ」
「ぬいぐるみなんてどこにおくの」
「向こうのアクセサリーショップ覗きませんか」
「普段アクセサリーだなんてつけていないわよ」
左手首のブレスレットを軽く引っ張りながら言う。
これはアクセサリーではなく、迷子になった時の発信機だ。
エドはそこここを巡るが、果たしてナフィーに必要なものなど見つからない。
ただファーストフード店に立ち寄って各々セットを食べたくらいだった。
そのうちエドも疲れ果て、とうとう公園のベンチに座り込んだ。
「ねえナフィーさん、欲しい物はないんですか」
近くのドリンクバーで買ったミックスジュースを飲みながらエドが尋ねる。
ナフィーはその近くに売っていたフランクフルトを頬張りながら首を振った。
欲しいと言うよりも必要なかったと言った方がいいだろう。
そして帰った時に咎められるのも嫌だった。
「困りますよ、ケビンさんに色々買うように言われたのに」
食べ終わったフランクフルトの棒をくるりとまわして、ナフィーはエドをちらりと見た。
「じゃああれが欲しいわ」
「何ですか?」
嬉しそうなエドの声。
ナフィーの指は、フランクフルトの店の隣にあるクレープ屋を指していた。