ウタリ番外編
□トリ・トル旅行記
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ストロベリークリームのクレープがナフィーの手に渡された。
さすがのエドも一緒に食べる気はしなかったらしく生温くなったミックスジュースだけが彼の手にあった。
クリームは甘いだけだったが、ストロベリーはほの酸っぱい味がしてなんとなく美味しいと感じる。
「ナフィーさんはちっちゃいのに沢山食べますね」
氷をかき混ぜてエドが言う。
プラスチックの容器は透明で、底溜まりの氷ががらがらと男を立てるのが確認できた。
「育ち盛りなの」
「沢山食べていっぱい大きくなってください」
薄桃色のワンピースを着た少女と、灰色のスーツを着た青年が仲良く並んでベンチに座る姿は、やはりどこかちぐはぐだった。
ナフィーの手からクレープがなくなろうという時、クレープ生地がひしゃげて生クリームがその右手についた。
ピンク色になったあのハンカチは、なるべく使いたくない。
とは言え舐めとるのも考えものだ。
意地汚く見えるし、第一口の中すらクリームで甘いのに綺麗になるとは思えない。
唾液のついた手も洗いたくなるだろうし、こんな事になるならば一緒にもらった紙ナプキンを早々に使ってしまうのではなかった。
そう思案にくれていると、エドが何かを差し出してきた。
灰色のハンカチだった。
「どうぞ、使ってください」
「‥‥ありがとう」