ウタリ番外編

□トリ・トル旅行記
8ページ/14ページ

 クレープを食べ終わると二人はまた街をうろつき始めた。
夕方になり始めた頃、煌びやかな場所を抜けて少し寂れた、埃のにおいのきつい場所にたどり着く。

「この近くには放棄された工場が沢山集まった場所があります。そこに迷い込んだら絶対出られないから注意してくださいね」

 右手をしっかりと握られているのに、どうして迷い込む事が出来るのだろう。
疑問に思ったけれど、口に出す事はしなかった。
 ぽつぽつと歩くうち、小さな花屋が目に付いた。
そこにはナフィーの知り合いによく似た薔薇や、エドのような向日葵や、ケビンのイメージの常緑樹などが売られている。
なんらおかしな事のないその風景から、ナフィーは目を離す事ができなかった。

「ナフィーさんって本当にほしいものありませんよね」

 エドが不満そうに呟く。
ナフィーはまっすぐに指をさした。

「あれが欲しい」

 色とりどりの花。
埃っぽいにおいの場所に咲く鮮やかな花々。

「あれから、エドが私に似合うと思った花を買ってきてほしい」

 自分には何の花が似合うのか、ナフィー自身には分からなかったから。
 エドは優しい微笑んで、ただ一言「はい」と答えた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ