ウタリ番外編
□トリ・トル旅行記
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クレープを食べ終わると二人はまた街をうろつき始めた。
夕方になり始めた頃、煌びやかな場所を抜けて少し寂れた、埃のにおいのきつい場所にたどり着く。
「この近くには放棄された工場が沢山集まった場所があります。そこに迷い込んだら絶対出られないから注意してくださいね」
右手をしっかりと握られているのに、どうして迷い込む事が出来るのだろう。
疑問に思ったけれど、口に出す事はしなかった。
ぽつぽつと歩くうち、小さな花屋が目に付いた。
そこにはナフィーの知り合いによく似た薔薇や、エドのような向日葵や、ケビンのイメージの常緑樹などが売られている。
なんらおかしな事のないその風景から、ナフィーは目を離す事ができなかった。
「ナフィーさんって本当にほしいものありませんよね」
エドが不満そうに呟く。
ナフィーはまっすぐに指をさした。
「あれが欲しい」
色とりどりの花。
埃っぽいにおいの場所に咲く鮮やかな花々。
「あれから、エドが私に似合うと思った花を買ってきてほしい」
自分には何の花が似合うのか、ナフィー自身には分からなかったから。
エドは優しい微笑んで、ただ一言「はい」と答えた。