ウタリ番外編
□トリ・トル旅行記
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焦茶色の髪を短く刈り上げだ青年は桃色のワンピースを手にとって少女に振り向く。
「ナフィーさんナフィーさん、これなんてどうですか」
果たして二人はその店に全くと言っていい程不似合いだった。
背の高い青年は灰色のスーツに身を包み、少女は無機質な白のワンピースを身に着けていた。
青年はスーツに着られていると言った方が良かったし、少女は少女でまるで病院から抜け出したかのように清潔だ。
その意味から言えば二人はこの店どころか、トリ・トル全域で不似合いだった。
しかし青年は気にした様子もなく、その上上機嫌にワンピースを選んでいる。
「気に入りませんか?じゃあこっちのパフスリーブのはどうでしょう」
桃色で、白のフリルのついたワンピースを少女にあてがうと、青年はにこりと笑った。
酷く不似合いだ。
少女は静かに首を振る。
「そんなの、必要ないじゃない」
左手首につけたブレスレットを触りながら、うんざりしたように呟いた。
しかし青年は気にした様子もない。
「必要ないなんて事ないですよ、ケビンさんが買うように言ったんですから!」
「‥‥ケビンが?」
「はい、その服じゃ目立つだろって」
胸ポケットをぽんと叩くと青年は満足気に笑った。
少女はそれを見ながら、小さなため息を一つだけついた。