ウタリ

□契約違反
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 ティラが窓の外を指さし、楽しそうに微笑む。

「見て、あの雲。
人の横顔みたいだよ」

 言われその雲を見ると確かに人の横顔のような形をしていた。
台座のような雲の上に人が二、三人生えているように見える。
その台座も犬の形をとっており、まるで何かの物語でも見ている気分だった。

「トゥーラは初め、世界に何も要らぬと考えた。
しかし美しきガーヤンが近づきトゥーラを誘惑した。
トゥーラは最初こそ戸惑ったがガーヤンの美しさにその身を任せた。
ガーヤンはすぐに身籠もりこの世に光と闇、そしてアーリー=シーとエルリを産み落とした‥‥」

 モリスは小さく神話の一説を呟き、雲を見る。

「まるでその神話のようじゃ。
あれはトゥーラとアーリー=シーとエルリであろう。
下におるのが、花になったガーヤンじゃ」
「じゃあ向こうの翼が生えた人はスチュリートだね」
「翼、もげてっているな」
「隣におるのはロマかの。
彼奴には翼がありゃせんでな」
「スチュリートの翼と同化してるぞ」

 二人から睨みつけられ俺はおとなしく窓の外を見ることにした。
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