ウタリ
□風の生まれるところ
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灰色の壁が押し迫るように身体の両側に立っている。
閉所恐怖症の人間には立ち入りを勧めたくないような圧迫感。
足下はアスファルトだったのかも知れない。
今となっては多量の埃と落書きによって何だったかを判別するのは難しいが。
彩り豊かな工場を進みながら、俺は舌打ちする。
男達は大人数だった。
つまり狭い道は使わないという事。
とはいえ入り組んだ工場区。
そう簡単に見つかる訳もない。
音を頼りに進もうにも、廃工場特有の反響がそれを阻む。
どうしても、早く見つけたかった。
奴らに気付かれる前に。
「だあっ!」
五ブロックほど進んだところにあった工場から、一人の男が転がり出てきた。
血にまみれ、地面に這い蹲って唸っている。
続く、爆発音。
幾枚か残っていたらしい窓ガラスがその衝撃に耐えかねて、散る。
錆びた鉄の扉が跳ね飛び、千切れ飛び、転がっていた男を押しつぶす。
扉があった場所からの侵入を試みた。