ウタリ
□ナフィー
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次の日、悪魔の息子という囁き声で目を覚ます。
女神の娘、と軽く返答してから石をどけ、カゼリトを迎え入れた。
聞くと昼をとうに過ぎていてよっぽど疲れていたらしい一人で感心していた。
カゼリトは大きな懐中電灯を二つと水、食料と調理器具を持ってきただけですぐに帰ってしまった。
忙しいのだろう。
「息が詰まるね」
パンを食べながらティラが言った。
「そうだな」
その言葉には俺も賛成する。
換気が悪いとかそういう問題ではなくて
暗い場所に閉じこめられた人間はどれくらい耐えられるのかという
アイデンティティーの存続の危機すら感じる問題だった。
「花が見たいな」
「花?」
「そう、花」
その提案にも心の中では賛成していた。
花でも見れば少しくらい心が安らぐかも知れない。
「しかしこの暗闇の中のどこに花なんか咲いてるんだ」
外に出るのは危険だし、カゼリトに頼むのも気が引ける。
言葉では否定しておいた。
にも関わらずティラがなおも食い下がる。
「咲いて無くてもいいよ。
苗とか種でもいい。
あたしの力で咲かせるから」
半時間程討論した後、結局俺が探しに行く事になってしまった。
そうなったのは俺にも賛成の気持ちがあったのと、
ティラが揚げ足をとるのが上手かったからだと記しておく。
ただ、やはり第一の原因は俺が賛成していたからだ。
決して言い負かされた訳ではない。