短編

□オレンジの猫
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「コラー。待ちなさーい。ミーシャ!」
12,3歳の少女が広い庭で仔猫を追いかけている。
ふわっとしたブロンズの髪に淡い桃色のくりっとした大きな少しつりあがった瞳をしていた。
「捕まえた!このヤンチャっ子!」
少女は笑いながらミーシャと呼んだ薄いオレンジ色の猫を抱き上げた。
「どっちがヤンチャなんだか。愛紗の方がボクよりもよっぽヤンチャって感じなんだけどなー」
ミーシャが不満そうにそうつぶやく。
「ミー?何か言った?」
愛紗がとがった声で言う。
「別に、何も」
とサラッと返した。
「ねー、ミー。ミーの本当の飼い主って、どんな人だったの?」
愛紗が不意に聞いた。
「はっきり言って、全然どんな人だったか覚えて無いんだ。愛紗の所に来る前の記憶が全く無いから……」
「ゴメンネ。そう言えばミー自分の本当の名前も覚えてなかったのに」
愛紗がうつむいて言う。
「でも・・・私…必ずミーの本当の飼い主見つけてあげるから」
愛紗が力強く言った。
「あの…すみません、つかぬ事お伺いしますがその猫は何処で?」
突然門の外から20歳前後の男が声をかけてきた。
「もしかして、本当のミーの飼い主さん?」
愛紗がミーシャを抱いたまま門にかけよった。
「この子は私が1週間前に家の門の前で拾ったの。名前は分からないからミーシャって呼んだわ」
愛紗が言った。
「リオン?リオンなのか」
男が叫ぶ。
「この子には私の所に来る前の記憶は無いの」
愛紗が悲しそうにつぶやく。
「でも……もし本当にミーの飼い主なら……」
そう言ってうつむいてミーシャをを男に差し出す。
「なあ、お前はどっちが良い?」
男がミーシャに言う。
「俺はお前を無理矢理に連れて帰るつもりは無い。お前の暮らしたいほうで暮らせ」
男はそう言い放った。
「ミー?ミーの好きな方を選べばいいんだよ」
「ボクは……何処にも行かないよ。記憶が戻るまで……うんん、戻ってもズーと愛紗の側にいるよ…いてもいい?」
ミーシャがそう聞くと愛紗は泣きながらコクンと頷いた。
                END

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