余命僅かな天使たち
□初めの天使の死
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その日から俺は、路上生活を余儀なくされた。
野良猫が駆け回る路地裏にひっそりと身を潜めながら、朝と昼に行動し、夜になったら廃ビルの一室で体を丸めて眠った。
厳しい寒さに凍えそうになった時もあれば、茹だるような暑さでバテてしまいそうになった時もあった。
そんな生活をしていて、俺は、思い知らされる事となった。
俺は、な中で暮らしていた事を…。
―それから、さらに1年が経った…。
その日は、
俺は3日間、食べ物にありつけず、3日前に降ったにわか雨の僅かな雨水しか口にしていなかった。
昼間だから、人通りが多い。
とにかく暑い。
俺の場合、衰弱しているからか、この暑さが堪えられない。
俺…このまま、死んじまうのか?
まぁ、それでもいっか。
路上生活者の餓死なんざ、このご時世では日常茶飯事だ。
とは言っても腹は減るので弱った身体にむちうって、銭湯に行き、なけなしの金を払って風呂に入り、コインランドリーで着ていた服を洗濯した。
身だしなみを整えて近くのデパートの地下にある食品売り場に行った。
・
俺が来た時は夕方近かったから、夕飯を求める買い物客で溢れていた。
物産展もやっていたのでそこを中心に歩く。
端の方に差し掛かった時、俺は、誰かに腕を引かれ、肉の加工品の売り場の奥に
られる。
腕を引いていたのは、売り子のおばちゃんだった。
「あんた、この前も来てたろう?これ、全部持ってきな。」
そう言って試食用だったであろうハムやソーセージをビニール袋に適当に放り込み、レジ袋に入れて手渡す。
「本当はいけない事なんだけど、私はもうすぐアガりだし、どうせゴミになるだけだからあんたにあげるよ。」
最初は遠慮していたが勢いに押されてもらった。
何度もお礼を言ってデパートを出て行った。
路地裏に戻って袋を開けると試食のハムと一緒にあんパンと瓶の牛乳、ほんの少しだが、お金が入っていた。
俺は、それを見てこう思った。
人を愛する人は人に愛されるという事を…。
翌日…。
この日も朝から茹だるように暑い…。
昨日、デパートでもらった試食も昨日のうちに食いつくしてしまった俺は、僅かなお金が入ったレジ袋を持って街へ買い物に行く事にした。
・
街を歩いていると色々な人間が歩いている。
額を流れる汗をハンカチで拭うスーツを着た少しメタボ気味のサラリーマン。
手を繋いで仲良く歩いている親子。
腕を組んで俺を横切るカップル。
みんな幸せそうに笑い、とても生き生きしている。
信号が赤に変わって信号待ちをしている時…。
『ねぇ、あの男の子、スゴく細くない?超羨ましい。』
『えぇ?拒食症じゃねぇの?気持ち悪りぃよ。』
さっき横切ったのとは別のカップルが指をさして小声で喋っているのに気づいた。
それは、明らかに俺の事だった。
確かに、退院して路上生活を始めてから腹いっぱい食べ物を食べていなかったし、サッカーもやめちまったからだいぶ痩せちまったな。